会社規則と副業｜就業規則で禁止されている場合の対処法

「副業解禁」という言葉が世間で広まる一方、自分の会社は依然として副業禁止――そんな現実に悩んでいませんか？厚生労働省のガイドラインが改訂され、副業を推進する社会的な流れが加速する中でも、企業によっては就業規則でしっかり「副業禁止」と明記されているケースが少なくありません。

しかし、「禁止」と書いてあるからといって、必ずしも全ての副業が不可能というわけではありません。本業に支障を与えず、会社の信用を損なわない範囲での活動や、合法的な収入の得方は数多く存在します。

この記事では、副業禁止規定の背景から、実際のリスク、合法的な回避策、禁止中でもできる稼ぎ方、そして長期的なキャリア戦略まで徹底解説します。読めば、「副業禁止」をただの足かせにするのではなく、自分の未来を広げるための行動指針がきっと見つかるでしょう。

会社規則と副業の関係を正しく理解する

就業規則に副業禁止が記載される理由

企業が副業を禁止する主な理由は、「本業に支障が出るリスクを避けるため」です。社員が副業に時間や体力を割きすぎると、本来の業務に支障が出たり、集中力が欠けたりする恐れがあります。また、企業秘密や顧客情報が外部に漏れる可能性を懸念しているケースもあります。たとえば同業他社でのアルバイトや、自社と競合するような副業は、会社の信頼性や競争力に直結する重大なリスクです。さらに、従業員同士の公平性や労働時間の管理、社会保険の扱いにも関係するため、就業規則にはっきりと副業を禁止する条項を入れている企業が多いのです。ただし、法律上は副業を一律に禁止する明確なルールは存在しません。これはあくまで企業側の方針であり、就業規則の内容によって大きく異なるため、自分の会社のルールを正しく理解しておくことが重要です。

副業が認められる会社と認められない会社の違い

副業が認められているかどうかは、その企業の「風土」と「業種」によるところが大きいです。たとえばIT業界やベンチャー企業では、副業に寛容な企業が多く見られます。イノベーションや新しい価値を生み出すことを重視しているため、社員のスキルアップや収入多様化を歓迎する文化が根付いています。一方で、金融機関や公務員系の職場では、情報漏洩や利益相反の観点から副業を厳しく制限している場合があります。また、社員数が多く労務管理が複雑な大企業ほど、副業許可には慎重になる傾向があります。さらに、同じ企業でも部署や役職によって対応が異なるケースもあるため、必ず所属部署の人事担当や上司に確認を取ることが大切です。

厚生労働省のガイドラインと副業の位置づけ

実は国としては副業を「推奨」しています。厚生労働省は2018年から「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、モデル就業規則も改訂されました。そこでは、「労働者が自らの責任で副業・兼業を行うことができる」という趣旨が明記されています。つまり、副業は禁止されるべきものではなく、働き方の多様化を進める一環として肯定的に捉えられているのです。しかし、現実にはこのガイドラインは「努力義務」であり、企業に強制力はありません。そのため、あくまで企業ごとに裁量があり、実際の就業規則が優先されます。それでも、このような政府方針があることを知っておくと、企業との交渉時や就業規則の見直し提案時に有利になることもあります。

労働契約法との関係性

労働契約法では、労働者と使用者との間で結ばれる契約内容が明確にされていれば、双方がその内容に従う義務があります。ただし、同法第3条では「労働者の権利を不当に制限してはならない」ともされています。つまり、副業を全面禁止することが合理性に欠ける場合、それは違法とみなされる可能性もあるのです。たとえば「本業に支障が出ていない」「秘密保持義務を守っている」などの条件を満たしているなら、裁判などでも副業を禁止する正当性が認められない場合があります。ただし、就業時間内に副業を行ったり、競合会社で働いたりするような行為は、当然ながら契約違反とされやすいため注意が必要です。副業に関しては、契約の内容とその合理性が法律的にも重視されるポイントです。

「副業禁止＝絶対NG」ではないケースとは

「就業規則に副業禁止と書いてある＝副業は絶対ダメ」と思い込んでいる人は多いですが、実はそうとは限りません。副業の内容や方法、影響度によっては、会社側が黙認しているケースもあります。たとえば、休日にライティングやイラスト制作を請け負ったり、YouTubeで広告収入を得たりするような副業は、会社の業務に全く支障がなければ特に問題視されないこともあります。さらに、最近では副業解禁の流れが強まり、形式的に「原則禁止」としつつも、申請すれば個別に認可されるような運用をしている会社も増えています。重要なのは、「どういった副業か」「誰にどんな影響があるか」という点。つまり、すべてが一律に禁止されているわけではないことを理解し、自分の行動に責任を持つ姿勢が求められます。

副業禁止規定がある場合の合法的な回避策

会社に申請して承認を得る方法

最も確実でリスクの少ない方法は、会社に正式に申請をして承認を得ることです。多くの企業では、副業禁止を原則としていても、事前申請を行えば内容次第で認められるケースがあります。特に本業と競合せず、業務時間外に行い、会社の信用を損なわない副業であれば、許可が下りる可能性が高いです。申請時には副業の目的、内容、時間配分、収益の見込みなどを具体的に説明し、「本業に支障がない」ことを強調するのがポイントです。承認を得れば安心して副業を行えるため、第一の選択肢として検討する価値があります。

会社が把握しない範囲での投資や資産運用

副業禁止規定があっても、株式投資や投資信託、不動産投資などの資産運用は、基本的に「副業」とはみなされません。これらは労働ではなく、資産を活用して収益を得る行為とされるためです。もちろん、頻繁なデイトレードなどで本業に支障をきたす場合は別ですが、長期的な資産運用であれば問題になることはほとんどありません。また、暗号資産（仮想通貨）やクラウドファンディング型投資なども同様です。ただし、所得が増えれば税金の申告は必要になるため、税務面の知識も身につけておく必要があります。

家族名義・法人化による収益化

一部の人は、副業を自分の名義で行わず、家族名義や法人を通じて行う方法を選びます。たとえば、奥様やご家族の名義で事業を行い、自分はあくまで「アドバイザー」や「サポート」という形にする方法です。また、副業を法人化すれば、自分が役員報酬を受け取らない形で運営し、直接的な給与所得を得ないというやり方もあります。ただし、この方法は税務署や会社から見てもグレーな部分があり、倫理的にも慎重な判断が求められます。安易に実行すると逆に大きなリスクを抱えることになるため、専門家への相談が必須です。

副業に該当しないスキルアップ活動

会社の副業禁止規定は、必ずしもすべての収入活動を制限するものではありません。たとえば、資格取得やスキルアップのための学習、ボランティア活動、無償での創作活動は副業とはみなされません。さらに、それらが将来の収入源につながることもあります。たとえば、プログラミングやデザインの勉強を進めながら、ポートフォリオを作成し、将来の転職や独立につなげる方法です。このように、副業禁止の中でも合法的に「未来の収入基盤」を育てることが可能です。

就業規則改定の動きを社内で促す方法

副業解禁の流れが社会全体で進んでいる中、社内でも規則改定が行われるケースが増えています。もし副業を強く希望するなら、社内の意見交換会や人事部への提案を通じて、規則改定の動きを促すのも一つの方法です。特に、スキル不足や人材流出を防ぐため、副業を認める企業は年々増加しています。社内での小さな意見が、最終的に規則変更につながることもあるため、タイミングと方法を工夫すれば現実的な選択肢になります。

副業禁止でも可能な稼ぎ方の具体例

株式投資・投資信託

株式投資や投資信託は、労働ではなく資産から収益を得る方法のため、多くの企業で副業には該当しません。証券口座を開設し、株や投資信託を購入することで配当金や値上がり益を得られます。初心者の場合は、リスク分散ができるインデックス型の投資信託から始めると安心です。また、積立NISAやiDeCoなどの制度を活用すれば、節税効果を得ながら長期的な資産形成が可能です。ただし、短期売買や高額なレバレッジ取引はリスクが高く、本業への影響が出ないよう資金管理と時間管理には注意が必要です。

不動産投資（小規模運用含む）

不動産投資も、資産から収益を得る形のため、原則として副業扱いされません。アパートやマンションの一室を所有し、家賃収入を得る方法や、小規模で始められるワンルームマンション投資などがあります。また、最近では不動産クラウドファンディングという少額から参加できる方法も注目されています。ただし、物件管理や賃貸契約などに時間がかかるケースもあるため、管理会社を利用するなどして本業への負担を減らす工夫が必要です。

ポイント活動やキャッシュレス還元

日常生活の中でコツコツ収益を得る方法として、ポイント活動（ポイ活）があります。クレジットカードや電子マネー、QRコード決済のキャンペーンを活用し、買い物やサービス利用時にポイントを貯め、それを現金や商品券に交換する方法です。これらは労働ではなく消費行動の一環として認識されるため、副業には該当しません。特に楽天ポイントやPayPayポイントなどは、うまく活用すると年間数万円以上の価値を生むこともあります。

資格取得によるスキルアップと将来の転職準備

副業が禁止されている場合でも、資格取得やスキルアップは制限されません。むしろ本業での評価向上や将来のキャリア形成にプラスになるため推奨される活動です。たとえば、簿記やTOEIC、プログラミング資格、Webデザイン、動画編集スキルなどは、将来的に副業や独立、転職の武器になります。このように、今は収入につながらなくても、将来の収益を見据えて準備を進めることが可能です。

アフィリエイトやブログ運営の注意点

アフィリエイトやブログ運営は、副業禁止の会社でも黙認されるケースがあります。ただし、広告収入が発生する段階になると住民税などで収入が会社に伝わる可能性があるため、注意が必要です。副業禁止規定がある会社で行う場合は、匿名で運営し、会社名や個人を特定できる情報を公開しないことが重要です。また、収益が大きくなる前に会社に申請するか、就業規則改定を待って正式に活動を拡大する戦略をとるのが安全です。

副業禁止と向き合うための長期的戦略

転職による副業解禁の選択肢

副業禁止がどうしても解消されない場合、思い切って副業を認めている会社へ転職するという選択肢があります。特にIT業界やベンチャー企業、外資系企業では副業解禁が進んでおり、柔軟な働き方を認めているケースが多いです。転職時には「副業制度の有無」や「副業申請のハードル」も確認しておくと安心です。本業と副業の両立が可能な環境に身を置くことで、安定した収入とスキルアップの両方を得ることができます。

自己資産の構築と収入多様化

副業が禁止されている間でも、自己資産を増やすことで収入源を多様化する準備ができます。株式や投資信託、不動産といった投資はもちろん、スキルや資格という「人的資本」に投資することも重要です。また、副業が解禁されたときにすぐ行動できるよう、ビジネスアイデアや計画を事前に練っておくことも有効です。こうした準備期間を活用することで、将来のリスク分散が可能になります。

法改正や社会動向をチェックする習慣

副業解禁は社会的な流れとして加速しています。厚生労働省のガイドライン改訂や、企業の働き方改革の一環として規則が緩和されるケースが増えています。そのため、法改正や社会動向を定期的にチェックする習慣を持つことで、副業が可能になるタイミングを逃さず行動できます。情報収集は厚労省の公式サイトや経済ニュース、業界団体の発表などを通じて行うと確実です。

将来の独立・起業準備

副業が禁止されていても、将来的に独立や起業を目指す準備は可能です。業務時間外にビジネスプランを練ったり、マーケティングや経営の知識を学んだりすることは副業には該当しません。また、人脈作りや市場調査、資金計画なども事前に進められます。本業の安定収入を活用して準備期間をしっかり確保することが、成功率を高めるポイントです。

副業解禁時代に向けたキャリア戦略

社会が副業解禁に向かっている中、自分のキャリア戦略も長期的に見直すことが必要です。副業が可能になることで、複数の収入源を持ち、スキルを幅広く活用する働き方が現実的になります。将来的には、本業と副業の境界が曖昧になり、複業（パラレルワーク）としてキャリアを形成する人が増えるでしょう。今のうちから、自分がどの分野で価値を提供できるか、どのような形で収益化できるかを明確にしておくことが重要です。